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俳句の手引き

前号に引き続きたくさんの投句ありがとうございます。
前号で冬帽子の句を募集しましたが、今年の冬は例年より暖かく、
冬帽子をかぶる機会も少なかったのではないでしょうか。

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特選 冬帽子脱ぎてただいまといふ顔 貴羽(たかはね)るき

 寒い外から帰って冬帽子を脱ぐと、「ただいま」という表情が現われる。互い
の顔を見て頬をほころばせることが二人の「ただいま」の挨拶なのでしょう。そ
の表情を覗かせる一瞬の間を冬帽子が演出していて、とても素敵な句です。

 

入選 片思い繰り返してく冬帽子 真崎一恵(まさきかずえ)

 片思いを繰り返すのはいつも寒い冬の日。話し言葉の「繰り返してく」という
表現が、片思いばかりしてしまう自分を達観しているように感じられます。しか
し、結句の冬帽子が、心の奥底に隠れる切ない想いをうまく暗示しています。

  冬帽子以もて吾の影を長くせり 小鳥遊栄樹(たかなしえいき)

 「以て」は冬帽子を手に持っているという意味になります。「私の影を長くして
いる」ということで持った帽子を高く掲げているのだと思います。幼い兄弟が影
の長さを競っているのでしょうか。冬帽子が、かわいらしさを演出しています。

 

 今回、紹介した句はどれも冬帽子の機能やイメージを上手に使っていましたね。
十七音という短い詩形の俳句では、すべてを表現することができませんが、今回
のお題だった冬帽子のように、身近なモノに託して自分の気持ちを表現してみて
はいかがでしょうか。                  (川嶋健佑 選)

<中東周遊取材>レバノン・来る冬を待つシリア難民(森口広大)

(この記事は2015年1月、LINK学生ジャーナル12号に掲載されたものです)
 
 2011年より続くシリア内戦により、現在に至るまでレバノンでは、国連に登録されている者の数だけでも110万人以上の難民がシリアから流入している。特にレバノンの東部、レバノン山脈とアンチレバノン山脈の間に位置するベカー高原への流入が顕著であり、およそ41万人のシリア人が暮らしている。このベカー高原の気候は、地中海沿岸の他諸都市と比較して冬の気候が厳しく、例年積雪も観測されており、今年もここに住むシリア人たちはわずかな設備で厳しい冬を乗り切ることを強いられる。筆者は、気温が低下し始めた11月中旬から12月初旬にかけてこの高原の難民居住区の1つを訪れた。

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写真:レバノン有数の絶景を誇るベカー高原では、このようなテント群が非公式に点在する。 続きを読む