大阪都構想、決着(村上直樹)

都構想、正しく理解できる情報提供は「難しい」

 大阪市の存続を決定した5月17日の「特別区設置住民投票」。維新の会と反対派とでは大阪と抗争の財政効果の見積もりが大きく離れるなど、情報が錯綜した。情報公開法などの行政法に詳しい関西学院大学の山下淳教授は「府と市は、住民への情報提供を可能な限りやったのだろう。ただ都構想の内容は専門性が高く、住民が正しく理解できるような情報提供をするのはとても難しい」と語る。

賛成反対両派、発信力に差

 賛成派と反対派の発信力の差は、住民の理解が進まなかった理由の一つだ。賛成派は資金力を武器に4億円を広報に投じた一方、反対派の発信媒体はチラシの配布などに限られていた。政治とメディアの関係に詳しい丸楠恭一(同大学教授)は、「CMなどの広告でも、資金力で維新の会が優位。反対派の対抗手段になりうるオンラインメディアの影響力は未だ不十分」と分析する。しかし今後、主にインターネットで情報を集める世代が増えれば、オンラインメディアの影響力が高まることから「オンラインでの発信力は増してくるだろう」と指摘する。

求められる府市一体の戦略

 大阪都構想が否決された以上、「府と市が一緒になって戦略を立てる必要がある」と山下淳教授は語る。「重要なのは行政サービスを住民にとって身近なものにすること。今の大阪市のもとで区役所の権限を強化する総合区制度(市議会が区長を任命する代わりに、区長に大きな裁量を与える制度)は取り組む意義がある」という。

周辺都市との連携が必要との声も

 一方、都市社会学が専門の大谷信介(同大学教授)は「(大阪都構想よりも)大阪、京都、神戸といった都市が連携していく関西圏EU化構想の方が理に適っている」と話す。大阪一都市だけでは人口や税収で東京に並ぶことはできない。逆に関西の強みは「地価が東京に比べて安く、住みやすいということ。各都市が連携してより住みやすい関西をつくっていくべき」と指摘する。

将来像明確に

 府・市の連携も、周辺都市との連携も、明確な目標があってこそだ。都構想をめぐる議論と住民投票は一つの大阪の将来像を提案し、大阪の今後についての議論を促すきっかけになった。今後は大阪・神戸・京都などの関西の都市が一つのビジョンを掲げ、議論を深めていくことが求められる。