ローカル線一人旅、最南端にて(三根穂香)

 一人で旅をする、あのワクワクは人生であと何回味わえるだろう。私はこの春、九州にて三泊四日の一人旅をした。

 目的地は九州の最南端である指宿(いずぶき)だ。近頃ローカル線での旅がマイブームであった私にとって、本州最南端を走る指宿枕崎線は魅力的に響いた。しかも昨年は存廃検討対象になったという。行き渋って万が一廃線になっては困る、とはるばる京都から足を運んだ。

  鹿児島中央駅から指宿枕崎線に乗り込む。九州の海沿いを潮の香りを運びながら電車は走る。日に焼けた地元の男子高校生であろう少年は友達に上京したいと九州弁でこぼしていた。現地の生活を肌で感じられるのもローカル線の良いところである。

 指宿駅で途中下車し、薩摩半島最南端の長崎鼻までバスで向かった。長崎鼻の突端には灯台があり、その麓には岩場へ続く階段がある。そこからかなり傷んで途切れ途切れになったコンクリートの細い道が伸びている。せっかくなら行けるところまで南に行って見ようと降りたはいいが、とにかく足場が悪い。履いていたパンプスがすぐ傷だらけになってしまった。横を見ると老夫婦が手を取り合いながら岩場を進んでいる。長崎鼻は、50年ほど前は新婚旅行のメッカであったと灯台前の看板に書いてあった。この夫婦も思い出の地を訪れているのだろうか。

 岩場の最南端に到着すると、視界いっぱいに広がる海。一人で風に吹かれていると、まるでこの海をすべて独り占めしているかのような錯覚に陥る。空はどこまでも青く風も穏やかで、いつまでもここに居たいとさえ思った。好きなだけ良い景色に浸れるのも一人旅の醍醐味である。

 幾らか時間が経ち、振り返るとどうやってここまで来たのか、と思うほどの足場の悪さ。到底一人では戻れそうになく、私は人知れず苦笑いする。手をひいてくれる人が居ないのも一人旅なのだ。