上尾歩のキネマ論評・3人の絶望と再生の物語

恋人たち 2015年公開 原作・監督・脚本/ 橋口亮輔

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アツシ役の篠原篤とリリー・フランキー

 

 

 

 橋口亮輔監督作品として7年ぶりの長編映画「恋人たち」が11月14日に公開される。本作に登場する3人の「恋人たち」はみな、恋人・友人との別れを経験する。妻を通り魔に殺害され、その裁判に力を尽くすアツシ。夫と姑との退屈な生活から浮気をした主婦の瞳子。親友への恋心を胸に秘める弁護士の四ノ宮。3人がそれぞれの絶望の中に小さな希望を見出していく、再生の物語である。

 本作は、前ページで取り上げたオリジナル映画プロジェクトの一作。3人のメインキャストには、オーディションで選ばれたほぼ無名の役者が起用された。橋口監督の言う「飲みこめない想いを飲みこみながら生きている人」として、3人の現実に対する怒りや悲しみが力強く表現されていた。

 妻を殺された怒りと裁判が上手く運ばない苛立ちが重なり、アツシが大声で怒鳴るシーンでは、極限の精神状態に追い込まれた者の心からの叫びがスクリーンに映し出され、見ていて圧倒された。

 「人間の感情をちゃんと描きたい」と述べる橋口監督の想いの通り、メインキャスト3人はとても魅力的に描かれている。彼らのあまりにリアルな演技は必見。

「恋人たち」
原作・監督・脚本/ 橋口亮輔
出演/ 篠原篤、成嶋瞳子池田良安藤玉恵、黒
田大輔、リリー・フランキー、他
配給/ 松竹ブロードキャスティング、アーク・フィル
ムズ
2015年11 月14 日よりテアトル新宿、テアトル梅田
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