手ぬぐいで持ち歩く防災知識 1人に1枚手拭いを(水戸さくら)

◇有限会社 クワン会長 高橋けい子さん

 「 防災拭い 」。災害時に役立つ情報が満載された手ぬぐいだ。
販売元は岩手県の クリエイティブ広告制作会社 、有限会社クワン。様々なグッズ製作に携わる中で、2005年にある民放局から防災ハンドブックの製作を依頼された。

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  各専門家の監修のもと修正を繰り返し、ハンドブックは4ヶ月をかけて完成した。しかし、同社の高橋会長はある疑問を抱いた。「本棚に並べられたハンドブックは、本当にもしものときに役立つだろうか」。日頃から手軽に持ち歩いて、災害時に参照して正しい対応ができるようでなければ、本にどんなに良質な情報を詰め込んでも役に立たない。日本古来の文化である手ぬぐいなら抵抗なく持ち歩くことができ、情報を載せるほかにも包帯やマスクなどの布本来の用途も広がる。阪神淡路大震災の経験を元に、非常時の為に備えておくべき物に加えて、必要な衛生用品やけがの応急処置などが一枚に纏まった、 防災拭い「防災グッズ編」が年内に完成した。 

 しかし普及は遅遅として進まなかった。防災拭いの販売を開始した2005年、まだ3・11を経験していなかった東北には震災への危機感が薄く、1年目は50枚も売れなかったという。それでも普及活動を続けて取扱店を増やし、当初の「防災グッズ編」、「地震編」を制作、後に東北大学の今村文彦教授に監修を依頼し、「津波編」が誕生した 。3・11が起きたのはその後で、世間からの注目度が急激に増し、販売数も増えた。常に最新の情報を載せるために被災者の話にも耳を傾け、「津波編」は震災後リニューアルした。2014年には、特に女性特有の避難所生活の悩みに焦点をあてた「レディのココロエ」とその英語版も発売された。

 防災拭いの一番の特徴はデザインのポップさだ。それぞれの情報に イラストがついていて、中央には PRキャラクターのずきんちゃんがプリントされている。可愛らしい見た目の裏側には高橋会長の信念があった。

 リアルで悲惨な災害の様子は一度見たら忘れられないし、 もう一度見たいとはなかなか思えない 。けれど災害はまたいつか、明日にでも起きる。その時に正しい行動や判断をするためには、私たちは何度も繰り返し防災について学ばなければならない 。そのためにはそのままでは思わず人が目を逸らしてしまうような被災経験が風化しないように、伝え方を工夫するべきではないのか。防災ぬぐいでは、災害に対する心構えを、ずきんちゃんが子供からお年寄りまで誰にでもわかるイラストで伝えてくれる 。

 「ずきんちゃんはひょうきんなところがあるんですよ。災害時用の非常食をおやつに食べてしまってお母さんに叱られて、その時はじめて正しい非常食の役割を学んだりするんです」。苦い震災の経験から学ぶべきことを、 日常のできごとに重ねたエピソードを通して、次の世代へ。次の企画は、 ずきんちゃんをアニメ化した防災教材を作り、多くの子供たちに観てもらうことだ。ずきんちゃんを通して、幼稚園や小さい子どものいる家庭でも防災について学んでほしい。1人に1枚防災拭いを普及させるのが高橋会長の願いだ。

 

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画像提供:有限会社クワン こしぇる工房アッド