俳句の手引き

前号に引き続きたくさんの投句ありがとうございます。
前号で冬帽子の句を募集しましたが、今年の冬は例年より暖かく、
冬帽子をかぶる機会も少なかったのではないでしょうか。

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特選 冬帽子脱ぎてただいまといふ顔 貴羽(たかはね)るき

 寒い外から帰って冬帽子を脱ぐと、「ただいま」という表情が現われる。互い
の顔を見て頬をほころばせることが二人の「ただいま」の挨拶なのでしょう。そ
の表情を覗かせる一瞬の間を冬帽子が演出していて、とても素敵な句です。

 

入選 片思い繰り返してく冬帽子 真崎一恵(まさきかずえ)

 片思いを繰り返すのはいつも寒い冬の日。話し言葉の「繰り返してく」という
表現が、片思いばかりしてしまう自分を達観しているように感じられます。しか
し、結句の冬帽子が、心の奥底に隠れる切ない想いをうまく暗示しています。

  冬帽子以もて吾の影を長くせり 小鳥遊栄樹(たかなしえいき)

 「以て」は冬帽子を手に持っているという意味になります。「私の影を長くして
いる」ということで持った帽子を高く掲げているのだと思います。幼い兄弟が影
の長さを競っているのでしょうか。冬帽子が、かわいらしさを演出しています。

 

 今回、紹介した句はどれも冬帽子の機能やイメージを上手に使っていましたね。
十七音という短い詩形の俳句では、すべてを表現することができませんが、今回
のお題だった冬帽子のように、身近なモノに託して自分の気持ちを表現してみて
はいかがでしょうか。                  (川嶋健佑 選)