世界報道写真展を見て(浜田寛子)

 7月某日、東京都写真美術館へ足を運んだ。6月から行われていた『世界報道写真展』へ行くためだ。新聞のコラムでこのイベントを知り、「自分の目で見たい」という衝動に駆られた。展示室内へ入ると、平日の午後であったにもかかわらず、50人ほどの人が訪れていた。『世界報道写真展』は、1996年に始まったイベントだ。毎年、1月から2月にかけて、コンテストが行われ、審査団によって入賞作品が選ばれる。写真のジャンルは一般ニュースや現代社会、スポーツや観察肖像など、多岐にわたる。

 様々な写真が展示されていたが、中でも印象的だった作品が2つあ
る。1つは、ターニャ・ハブジューカさんがガザで撮影した1枚の写真だ。ある小さな女の子が真っ白なパーティードレスを着たまま、海辺で遊んでいる。注釈には、「難民キャンプに住む彼女は、前日の夜に行われた結婚式披露宴のままの格好で、幸せそうに微笑む。この地域には400万人以上が住み、人々は不自由な暮らしを強いられている。暴力の脅威がなくなることは決してないが、人々は生き抜く難しさばかりを考えているのではない」ともあった。

 そしてもう1つは、ピーター・ファン・アットマールさんがアメリカで撮影した、ボビー・ヘンラインさんの写真だ。ボビーさんは、イラク従軍中の2007年に軍用車の爆発事故に巻き込まれた。顔の骨が粉々になり、全身の4割を火傷し、片腕を失った。しかし彼は現在42歳でコメディアンとして活躍している。彼の「持ちネタ」は、自身の火傷についてだそうだ。この写真を見た瞬間、涙が溢れた。辛い境遇にあるはずのボビーさんが、自身のけがをネタに他人を笑顔にしているのだ。事実、写真の中には彼と楽しそうに笑う女性が写っていた。

 これらの作品には、「生きる希望を忘れてはいけない」という共通したメッセージがあると思う。写真家たちが「何か」を伝える為にシャッターを切る。私たちも、その「何か」を感じとる義務があるのではないだろうか。この写真展の副題は、「おなじ時代、おなじ空の下に」。この世界には様々な人が、それぞれの人生をめいっぱい生きている。人生を無駄にはしていられない。そう感じた。

 空を見上げると、陽が西に傾いていた。ガザ、アメリカの空を思う。(浜田寛子)