キネマ論評

想い続けた映画監督の夢 根拠ない自信が味方

写真/上尾 歩 今を時めく映画監督、沖田修一。2016年3月公開の映画「モヒカン故郷に帰る」、今年6月放送のドラマ「火花」の監督を務めるなど引っ張りだこの人物だ。 沖田監督作品は、ゆったりした空気感をもつ作風と表現され、人と人のコミュニケーシ…

上尾歩のキネマ論評 最終回 『天然コケッコー』

天然コケッコー 2007年公開 監督・山下敦弘 原作:くらもちふさこ 出演:夏帆、岡田将生ほか 小学生3人、中学生3人が通うド田舎の学校に、東京から転校生がやってきた。小学校と中学校が同じ校舎にあり、生徒の顔ぶれが変わらないため、新顔がやって来る知…

上尾歩のキネマ論評・3人の絶望と再生の物語

恋人たち 2015年公開 原作・監督・脚本/ 橋口亮輔 アツシ役の篠原篤とリリー・フランキー

上尾歩のキネマ論評・写真は未来への罠である

横道世之介 2013年公開 監督・沖田修一 大学生活において何が大切か、もちろん人それぞれだが、私の場合何をしたかではなく、何を残したかであると思う。何をしたかは自分の思い出の中に、何を残したかは、自分以外の人の思い出にどれだけ足跡をつけられたか…

<フィルムの魅力>上映会での出会い(上尾歩)

10 月19 日、神戸ドキュメンタリー映画祭のイベントの一つとして、神戸市立地域人材支援センターにて、ホームムービーの日 in 神戸が開催された。このイベントは、地域や家庭に眠るフィルムを持ち寄り、その時代の記憶を呼び覚まそうというものだ。 私は受付…

上尾歩のキネマ論評・目標にまっすぐなおじいさんの物語

『ストレイト・ストーリー』1999年デヴィッド・リンチ監督 四月から新しく大学生になる人は、自分のやりたいことに使える時間が大幅に増える。たくさんのことにチャレンジするのも、一つのことに夢中になって取り組むのも自由なのだ。しかし、何かを始め…

上尾歩のキネマ論評・死と向き合い続ける人々

遺体~明日への十日間~2013年2月公開監督・君塚良一 一瞬にして一万五千人以上の命が奪われた3・11の東北大震災。その津波によって亡くなった方々の遺体が、次々と安置所に運び込まれる。「遺体 明日への十日間」という映画は、ある一人のジャーナ…

上尾歩のキネマ論評・真夜中を走る二人の物語

真夜中のカーボーイ1969年日本公開監督・ジョン・シュレシンジャー 僕はモラトリアムを、何をしても、しなくてもいい時期だと思う。そして、その象徴が僕たち大学生だ。面倒くさい授業はサボればいいし、やりたいことがあれば時間も作れる。逆に、自分か…

<映画館ボランティア>大きいものにはそれだけのロマンが詰まっている!(上尾歩)

この夏、私は憧れの映画館でボランティアとして働かせてもらっている。神戸・新長田にある神戸映画資料館という場所だ。読者の皆さんは、映写機というものを目にしたことはあるだろうか。私はこの場所で初めて本物を見た。名前が資料館というだけあって、映…

<上尾歩のキネマ論評>戦時中の日本兵と英国兵

「戦場のメリークリスマス」 1983年日本公開監督・大島渚 今回の映画は、坂本龍一作曲の音楽で話題となった「戦場のメリークリスマス」である。この映画は、兵士が戦場で戦うといったシーンは全くなく、日本軍の捕虜収容所で起こる、捕虜達へのひどい扱いが…

上尾歩のキネマ論評・雨の日にだけ会う二人の物語

言の葉の庭 2013年5月公開 監督・新海誠 恋が「孤悲」であったころ、孤悲とはひとり悲しむ心を表した。会えない時には、互いを求めあって和歌を詠んだ。今も昔も変わらない、思いを伝えるのは言の葉だ。そんな和歌からはじまる孤悲の物語を書いた映画、「言…

上尾歩のキネマ論評 第一回 『LIGHT UP  NIPPON』

打ち上げ花火はもともと「鎮魂」の意味を込めて打ち上げられたといわれる。雲の上と下のどちらからも見ることのできる打ち上げ花火は、亡くなった人と今生きている人とを結びつける役目を担ってくれているのだ。