オワハラ、ハッタリが大半か 内々定「労働契約ではない」(水戸さくら)

 企業が学生に対して、他社の選考を辞退し就職活動を終えることを強要する「オワハラ(就活終われハラスメント)」。学生は辞退時に叱責されることや内定の取り消しを警戒するが、実際にトラブルが起こることはまれなようだ。

「入社確約書」や研修合宿 学生「怖かった」

  甲南大学の男子学生は、他社の選考を受ける旨を最終面接で話すと「そんな自分本位の考えは通用しない」などと迫られ、「入社確約書」の提出を求められた。大学のキャリアセンターにも「(辞退すれば)相当怒られる覚悟を」と言われ「怖かった」と話す。結局他社に入社を決めて辞退の電話をかけたが、「少し嫌みを言われた程度。拍子抜けした」という。

 関西学院大学の男子学生は、最終面接通過の連絡と同時に8月1日から3日間の研修合宿参加を求められた。「研修参加が内定の条件だと思い、他社の面接を辞退して参加した」という。

学生に「誠実さ」求める?

 オワハラの相談窓口のひとつが各大学のキャリアセンターだ。関西のA大学キャリアセンターの職員は「就活時期の後ろ倒しの影響で、今年は内定辞退に関する相談が増えた」と話す。「内定辞退に法的問題はないが、一度は自分の能力を認めてくれた相手。礼儀はつくすべき」と指導している。

 B大学のキャリアセンターでは2015年、「『内定』についての考え方」という資料を学生に配布した。内定を「辞退することは可能」としたうえで、「誠実に対応しなければならないことを強く認識」し「企業や他の学生に迷惑をかけない」ことを求めた。

トラブルや内定取り消し「聞いたことない」

 一方、A大学キャリアセンターの職員は「明らかな脅迫で学生を囲んだり、内定辞退する学生を叱責したりしても、それが世に出たときのリスクが大きすぎる。ほとんどの企業がその一線は越えない」と予想する。入社確約書の提出後に内定を辞退するケースを多く見てきたが、それが大きなトラブルに繋がったことはなかった。研修や懇親会で学生を頻繁に拘束するケースについても「不参加を理由に内定を取り消されたという話は聞いたことがない」とした。

 労働法を専門とする関西学院大学の柳屋孝安教授は「内定式以前の内々定期間に入社確約書を提出しても、成立するのは労働契約ではなく『労働契約の予約』にすぎない」と話す。また、労働契約が成立した後でも、入社の週間前までなら解消できるという。

 企業による内々定の取り消しは「労働契約の予約」解消にあたる。解消には「正当な理由」が必要になるが、学生が他社の選考を受けることが「正当な理由」になるとは考えにくいという。学業などの学生にとってやむをえない事情を考慮せず、入社前に研修参加を強制することも違法だ。「学生が恐怖を感じるようなオワハラは犯罪にあたる場合もある。法律の知識がない学生を脅してなびかせるのがねらいでは」と分析した。