選挙カー 狙いは若者にあらず(水戸さくら)

   選挙の度に広報活動に用いられる選挙カー。LINKジャーナル編集部が阪神地域の大学生100人を対象に実施した調査では、「選挙カーによる広報活動に効 果はあると思うか」という問いに対する回答は「あると思う」が48%、「ないと思う」が52%とほぼ半分に割れた。学生の間では過半数にその効果が疑われ ている選挙カーの、本当の目的は何なのか。

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  実際に、いわゆる「ウグイス嬢」と呼ばれる選挙活動員として、ある県議会議員候補者の選挙カーに乗り込んでみた。手を振って選挙カーを歓迎する人は多い。 「お手を振ってのご声援誠にありがとうございます」とマニュアル通りに答えると「頑張ってね」と声をかけられる。候補者は「選挙カーは大多数の人には雑音 でしかないけれど、熱心な後援会の方にとっては気持ちを盛り上げる祭りの掛け声のようなものです」と話した。

  政治過程論を専門にする山田真裕氏(関西学院大教授)も、選挙カーによる広報活動は「不特定多数に訴えかけるための戦略ではない」と話す。土地に根ざして 暮らす有権者にとって、居住地域から議員を輩出することは大きな利益だ。そのぶん政治活動にも積極的なため、地域の候補者にとって最も重要な支持基盤にな る。「選挙カーを走らせることで、候補者は彼らと利害を共有していることをアピールできる」という。一方で、投票率が低く数も少ない若年層を対象にした選挙活動は非効率的で、壮年層以上を重視するほうが候補者にとっては合理的だ。

  三浦麻子氏(関西学院大教授)は、「そもそも学生は候補者にとって接触が難しい存在」と指摘する。移動中の車内から広報する選挙カーは、少ないコストで政 治参加に消極的な有権者に接触できる方法だが、日中自宅に居ることが少ない学生にはアピールしづらい。経営者団体や労働組合などの利益団体に属さないこと も学生と候補者との接触を困難にしている。一方「ネット選挙解禁後、SNSで情報発信をする候補者が多いのは、自分で情報を集めて投票する若年層の存在を 想定しているから」という。「候補者は若者を無視してはいない。学生は受身ではなく主体的に情報を獲得するべき」と話した。