想い続けた映画監督の夢 根拠ない自信が味方

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写真/上尾 歩

 

 今を時めく映画監督、沖田修一。2016年3月公開の映画「モヒカン故郷に帰る」、今年6月放送のドラマ「火花」の監督を務めるなど引っ張りだこの人物だ。 沖田監督作品は、ゆったりした空気感をもつ作風と表現され、人と人のコミュニケーションを繊細に描く。インタビューを通して監督の学生時代に触れ、映画製 作に対する想いを紐解く。

 

 

沖田ワールド 「現場で勝負」

 沖田監督は30歳手前に『南極料理人』(2009年公開)で商業映画デビューした。ヒットとともに『キツツキと雨』(12年)、『横道世之介』(13年) と作品数が増え、これまでに手掛けた長編映画は全部で6作品にのぼる。本数が増えても、映画製作に対する想いは変わらないという。自分の映画づくりはこうであるべき、と決めつけず、作品の内容、出演者、スタッフなど現場の状況に合わせてやり方を変える。『横道世之介』撮影時には、「普通」「客観」をキーワードに、俯瞰や長回しの撮影方法を用い、全ての年代に共通する大学生像を描いた。最新作『モヒカン故郷に帰る』では、俯瞰、長回しを多用せず、アップを使うことで家族の繋がりを表現した。

 沖田監督作品を観た多くは、「ほっこりした」という感想を持つ。人と人のコミュニケーションを細かく描く「沖田ワールド」の真髄は、演出の柔軟性にあるのかもしれない。

 

映画監督デビュー 温めつづけた映画への想い

 沖田監督は手に職を付けるため、日本大学でカメラの技術を学ぶ「撮影科」に進学した。「学生の頃は何もしていなかった」と当時を振り返るが、その一方で、「ずっと映画を撮りたい気持ちはあった」という。勉強を重ねるうちに、「自分の技量がプロとして通用するか」に興味が傾くが、あくまで「学習の環境」に身を置くことからチャレンジできない歯がゆさを感じ、一時的にやる気を失ってしまう。

 大学卒業後も「何とかなるだろう」という根拠のない自信から、アルバイトと映画企画の持ち込みを5年ほど続けたが上手くいかなかった。最後の作品と思って 作った自主製作映画『このすばらしきせかい』(06年)が映画プロデューサーから認められ、30歳手前に『南極料理人』で商業映画監督デビューを果たした。

 映画監督として仕事が成立するまでに時間はかかったが、「映画企画の持ち込みをしていた5年間はとてもいい経験だった」という。今後も一本一本映画を撮っていきたいと、作品を大切に思う気持ちが言葉に表れていた。(完) (上尾 歩)

 

【映画情報】

『モヒカン故郷に帰る』

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© 2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会

 

監督・脚本:沖田修一(『南極料理人』『横道世之介』)

出演:松田龍平 柄本 明/前田敦子 もたいまさこ 千葉雄大

木場勝己 美保 純・小柴亮太 富田望生

主題歌:細野晴臣「MOHICAN」(Speedstar Records) 音楽:池永正二

配給・宣伝:東京テアトル東京テアトル70周年記念作品>

 

公開:全国公開中

公式サイト:mohican-movie.jp

 

<ストーリー>

バカヤロー!だけど、ありがとう。家族が集まれば、最高で最強!

モヒカン頭の売れないバンドマン永吉。妊娠した恋人と共に結婚報告のため7年ぶりの故郷へ帰ると、矢沢永吉をこよなく愛す頑固親父・治と筋金入りのカープ狂 の母、そしてたまたま帰省していた弟がおり、家族が大集合。いつものど派手な親子喧嘩の後、親父のガン発覚。治の願いを叶えるため永吉は奔走し、喧嘩した り笑い合って離れた時を埋めていく。そして治が強く望む永吉と由佳の、手作り結婚式が始まろうとしていた――。

 

南極料理人』『横道世之介』と独自の世界観を生み出してきた沖田修一監督がオリジナル脚本最新作で挑むのは、息子と父を中心とした不器用だけど愛らしい家族 の物語。主演に松田龍平を迎え、柄本明前田敦子もたいまさこ千葉雄大と日本映画になくてはならない豪華キャストが大集結。家族が集まれば最高で最 強! 現代版究極のホームドラマが、この春日本を熱く盛り上げる!